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「砂漠」伊坂幸太郎 [書籍紹介]
スポンサードリンク伊坂幸太郎さんの「砂漠」。
社会に出る前のモラトリアム期間を過ごす大学生の男女5人の日常を中心に描いた青春小説。ものすごく大きな事件が起きる訳では無いのですが、どこにでもいそうな登場人物達の日常だからこそ、過去の学生時代を思い起こしつつ、世界観に入り込めました。
"西嶋" のぽっちゃり&眼鏡という容姿と、熱量、口調は、サンボマスターの山口さんを彷彿させます(私だけ?)。実際に近くにいたら疎ましく思ってしまいそうな "西嶋" ですが、その思いの強さも、臆さない姿勢も、読み進めていくと魅力的に感じました。
サン=テグジュペリの言葉を引用した、学長の「人間にとって最大の贅沢とは、人間関係における贅沢のことである」という言葉には、ちょっと感動しました。自分は、入学当初の "北村" 的なタイプでしたが、"北村" のように仲間と過ごすことなく、卒業してしまったことが悔やまれます(留年して、5年もいたのに!!)。留年した為、同期と一緒に卒業式に出ることすら無く・・・
大学時代という、砂漠に出る前の特殊なモラトリアムの時間。別の過ごし方もあったかもという思いもありますが、砂漠に出た現在でも遅くは無いので、人間関係での贅沢ができるように日々を暮らしていきたいと思います!
ところで・・・古賀氏は何をしていた人なんでしょうか!?
「火喰鳥 羽州ぼろ鳶組」今村 翔吾 [書籍紹介]
スポンサードリンク今村 翔吾さんの「 火喰鳥 羽州ぼろ鳶組 (祥伝社文庫) 」。
江戸時代の火消しを題材にした時代小説。主人公の松永源吾は「火喰鳥」の異名を持ち、かつて、江戸随一の火消しの評価を得ていた。しかし、過去の火事が原因で火消しを離れ、浪人暮らしとなってしまう。そんな彼が、藩から火消しを再建するように依頼され、少ない資金で仲間を集めることに・・・。
男気あふれる主人公の源吾をはじめ、力士、軽業師、学者・・・と、その男気に魅せられて集まった個性的な仲間たちもまた魅力的に描かれています(しっかりものの奥様も、とても素敵です)。
主人公の人柄や熱意や、役人たちや町の人など多くの人を巻き込んで世の中を変えていく姿に感動しました。シリーズもの(12冊?)らしいので、少しずつ続きを読んでいきたいと思います。
「満願」米澤 穂信 [書籍紹介]
スポンサードリンク米澤 穂信さんの「満願」。
2014年の「ミステリが読みたい!」、「週刊文春ミステリーベスト10」、「このミステリーがすごい!」で1位を獲得し、史上初の3冠に輝いた作品。
「儚い羊たちの祝宴」では独特の世界観が描かれていましたが、本作は、交番勤務の警察官や、バングラデシュに眠る天然ガスの採掘を画策する商社マン、ドライブインなど、もっと現実的な世界が描かれた6つのお話で構成される短編集です。
「夜警」では、あるベテランの警察官が、配属された新人の巡査が警察官としての資質を欠いているという印象を抱く。その不安は的中し、刃物を持って暴れる男性が暴れている現場で相手を射殺してしまい、自身も切りつけられて殉職してしまう。違和感を感じていたベテラン警察官は、この殉職の背後にある動機に気がつく・・・
・・・といった具合に、それぞれのお話で、「なぜやったのか?」という "動機" の方に注目した作品群というのが特徴になっています。「柘榴」は、ちょっと「儚い羊たちの祝宴」にも近い印象を受けました。
どのお話も面白いですが、共通点がわからない事故について調査する中で、じわじわと恐怖が迫ってくるような「関守」が一番好みでした。
タグ:米澤 穂信 このミステリーがすごい
「影法師」百田尚樹 [書籍紹介]
スポンサードリンク百田尚樹さんの「影法師」
学問も、剣も、誰よりも達者で、人格者だった幼馴染の彦四郎。
そんな完璧だったはずの彼が、なぜ、白昼堂々、女性に狼藉を働き、行方をくらまし、不遇の死を遂げたのか。
下級武士から筆頭家老にまで上り詰めた勘一は、20年ぶりに江戸から国元に帰り、ことの真相を知る・・・
二人が少年時代だった頃まで遡り、彼らが様々なことを経験し、成長していく姿が描かれていきます。
学があっても、剣の腕があっても、身分や長男か否かによって様々なところで制約があったり、理不尽なことでも受容しなければならないという武士の世界の不条理も描かれており、その時代に武士として生きることの大変さ、苦しみ、悲しみが伝わってきます。
そんな世界においては、まっすぐな勘一も、彦四郎も、大切な人を守るためには清廉潔白でばかりもいられず、「生きる」ということはこんなにも大変なことだったのかと思い知らされました。
大義や友との約束の為に自らの人生を投げうってまで献身的に生きた彼らの姿に心を打たれます。
「グラスホッパー」伊坂幸太郎 [書籍紹介]
スポンサードリンク伊坂幸太郎さんの「 グラスホッパー (角川文庫) 」
妻を殺され、復讐を目論む元教師の「鈴木」、相手を自殺に追い込む、自殺屋の「鯨」、ナイフ使いの若者「蝉」。
「鈴木」の復讐の相手である寺原の息子は、「鈴木」の目の前で通りすがりの車に轢かれて死んでしまうが、それは単なる事故ではなく、事故に見せかけて殺す押し屋「槿(あさがお)」が絡んでいるらしい。「鈴木」は押し屋と思われる男を尾行するが・・・
「鈴木」、「鯨」、「蝉」の三人の視点で描かれる、特技の異なる殺し屋達の絡みも読んでいて面白いですが、終盤の展開にハラハラドキドキさせられます。
殺し屋シリーズの一作目で、この作品の登場人物は、続く「 マリアビートル (角川文庫) 」、「 AX アックス (角川文庫) 」にも登場するので、シリーズの順番通りに読むのがお勧めです!(私は、「AX」⇒「マリアビートル」⇒「グラスホッパー」と逆順に読んでしまいました・・・が、それでも全部楽しめました!!)
「儚い羊たちの祝宴」米澤 穂信 [書籍紹介]
スポンサードリンク米澤 穂信さんの「儚い羊たちの祝宴(新潮文庫)」。
夢想家のお嬢様たちが集う読書サークル「バベルの会」を共通点とした5つの事件が描かれた短編集。
Twitterで評判が良かったのですごく期待して読んだのですが、一話目を読み終えた時には、正直なところ、「う~ん」という感じでした。しかし、読み進めて行くと、手記のような文体で淡々と語られるダークな世界観に引き込まれていきました。
「バベルの会」がキーワードとして登場するものの、あまり繋がり感を感じることなく進むのですが、最終話できちんとつながります。ちょっと怖いですが、印象に残る作品でした。
また、私は一度読んだだけでは理解しきれず、ネットで解説を見てようやく理解できたところもあったので、読解力が要求される作品かもしれません(私の読解力の問題化も!?)。
「阿弥陀堂だより」南木佳士 [書籍紹介]
スポンサードリンク南木佳士さんの「阿弥陀堂だより」。
自信を喪失した作家と、医師として活躍していたが精神的に病んでしまった妻。
故郷の長野に移り住み、村での生活や阿弥陀堂のおうめ婆さんらと交流する中で、心身ともに少しずつ変化していきます。
村の寂れた、もの悲しい雰囲気や、四季がうまく描かれていて、読んでいると村の様子が目に浮かぶようです。
また、作者の南木佳士さん自身が医師であり、また、パニック障害や鬱を経験されているということもあり、主人公の妻の心境の描写にリアリティがあります。
阿弥陀堂のおうめ婆さんのことばが纏められた、作中の「阿弥陀堂だより」にも、そういった経験から生まれた作者の死生観が反映されているようで、心に響きます。
「良い本を読んだな~」と思える作品で(もしかしたら、少し大人向けかも)、また数年後、或いは、日常生活で疲れてしまった時に、静かな環境で再読したいです。
「運転者」喜多川泰 [書籍紹介]
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喜多川泰さんの「 運転者 未来を変える過去からの使者 」。
何で自分ばっかりこんな目に合うんだ・・・と不運を呪い、イライラする主人公の前に表れた不思議なタクシー。
料金は不要で、運が良くなる機会を与えてくれる場所に運んでくれる謎の運転手との会話や、行く先々での体験を通じて次第に主人公の価値観が変わっていきます。
作品中の「運を貯める/使う」という概念が、斬新ながら、妙に腹落ちします。人生は「生まれてから死ぬまで」と考えていましたが、親やその祖先、或いは、子供や子孫まで、そして関わり合う周囲の人と繋がっていることを痛感させられました。先祖や親のいろんな思いがあってこその現在の世界・自分であり、自分も子供たちや未来の為に何かしなければと感じました。
「報われない努力なんて無い」と言われても、「う~ん」と思ってしまうタイプでしたが、読みやすいファンタジーな文章のせいか、説教臭さを感じることなく、読んでいくうちに、「そうかも!」と思うようになりました。長い目で見れば、きっとそういうものなんだと思います。
小説形式の自己啓発書なのかもしれませんが、プロローグをはじめ、伏線が気持ちよく回収されていくので、純粋に小説としても面白く、ちょっと泣けて、読後感も良いです。
「空飛ぶ馬」北村薫 [書籍紹介]
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北村薫さんの 「 空飛ぶ馬 (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書) 」。
女子大生の主人公と、大学の同窓の先輩である、噺家の円紫師匠が日常の謎を推理していく短編集。
博識で、大人な円紫師匠が名探偵ぶりを発揮します。殺人などの大きな事件ではなく、「喫茶店で3人の女性が紅茶に大量の砂糖を入れていたのはなぜか?」といった、すごく平和な謎を扱っていて全体的にゆったり穏やかな雰囲気です。
一方で、表題作の「空飛ぶ馬」のような人の"優しさ"を描いたものだけでなく、「砂糖合戦」、「赤頭巾」のような、人の"悪意" を感じさせるものもあり、全体がゆったりしている分、ちょっとぞっとするようなところもあります。
また、謎解きとは関係ないところで、ちょいちょい、落語の演目の話が出てくるのですが、その落語も聞いてみたくなりました。
エキサイティングな読書ではなく、物騒な話ではなく、のんびり謎解きをしたいという方には向いている作品だと思います。
#ちなみに、続編の「 夜の蝉 (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書) 」は、日本推理作家協会賞を受賞しています。気になります・・・
「のっけから失礼します」三浦しをん [書籍紹介]
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三浦しをんさんの「 のっけから失礼します 」。
ご自身の年齢や容姿をいじりつつも、乙女心満載の爆笑エッセイ。感動作「風が強く吹いている 」や直木賞受賞作「 まほろ駅前多田便利軒 (文春文庫) 」の作者とは思えないくらい、ユーモア(おふざけ?)あふれる内容です。
4ページに凝縮されたそれぞれのエピソードの面白さはもちろん、「NDD(=ニュードSドクター)」といった略語や、「もんだ眠(=いい気なもんだな、睡眠中の俺)」といった独創的な造語のセンスも秀逸。三浦しをんさんの小説の世界に浸るのも良いですが、エッセイの中で「三浦しをん節」に浸るのも良いです。
「ラッシュライフ」伊坂幸太郎 [書籍紹介]
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伊坂幸太郎さんの「 ラッシュライフ (新潮文庫) 」
画家、泥棒、教祖に惹かれる青年、医師、失業者を主役とした5つのストーリーがあちこちで繋がりながら、並行して進んでいきます。
ユーモアもあり、読み進めるに連れて「あの時のあれ/あの人が!?」と繋がっていく様は、読んでいてとても楽しいです。
しかし、「最後にどんでん返しが~」というタイプのパンチの効いた感じの作品では無いので、そういったことを期待して読むと、ちょっと不完全燃焼感はあるかもしれません。
ちなみに、場面転換や登場人物が多いので、一気に読まないと「この人誰だっけ?」となってしまうかも!?(私はなりました・・・)
おまけ:本作に登場する"泥棒(=黒澤)" は、 ホワイトラビット(新潮文庫)にも登場します。登場人物が作品をまたがって登場するのも、伊坂幸太郎さんの作品の魅力のひとつですね。
「夏の騎士」百田尚樹 [書籍紹介]
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百田尚樹さんの「夏の騎士
」
クラスでもパッとしない小学生3人が騎士団を結成し、友情、恋、冒険を経験しながら成長していく、昭和を舞台にしたお話。私が主人公と同い年ということもあり、作品中の世界観や、自身の子ども時代を懐かしく思いつつ、「勇気」の大事さを再認識させられました。大人になってからは、「勇気」というものに対して意識することがなかったのですが、実は重要ですよね・・・
タグ:百田尚樹
「毒を売る女」島田壮司 [書籍紹介]
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島田壮司さんの「 改訂完全版 毒を売る女 (河出文庫) 」
毛色の違う8つの作品が収められた短編集。
表題作の「毒を売る女」は、我が家にも幼稚園児がいて、いろんなママがいるんだなというのは日頃から感じていたので、表題作で描かれている幼稚園のママ友の妬みや攻防はちょっとリアルで怖かったです。
「糸ノコとジグザグ」は、"演説病の先生" として、島田壮司先生の作品ではおなじみの御手洗潔が登場します。タイムリミットがある作品でハラハラさせられます。
いろいろな作品が読めてお得感があるものの、個人的には「ガラスケース」以降の5つのお話はあまり合わなかったかも・・・
「背の眼」道尾秀介 [書籍紹介]
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道尾秀介さんの「 背の眼〈上〉 (幻冬舎文庫) 」
道尾秀介さんのデビュー作にして、ホラーサスペンス大賞特別賞受賞作。
子どもが行方不明になる事件が続くとある村に、作家の道尾と、旧友の霊現象探求所の真備が訪れ、心霊現象を解明するお話。 心霊現象を扱っているものの、ホラー要素は弱めで、謎や伏線いっぱいの本格ミステリでした。
上下巻に渡る長編ながら、良い意味であまり濃くなく、ゆったりと世界観に浸れました。面白かったです!
子どもが行方不明になる事件が続くとある村に、作家の道尾と、旧友の霊現象探求所の真備が訪れ、心霊現象を解明するお話。 心霊現象を扱っているものの、ホラー要素は弱めで、謎や伏線いっぱいの本格ミステリでした。
上下巻に渡る長編ながら、良い意味であまり濃くなく、ゆったりと世界観に浸れました。面白かったです!
「切り裂きジャック・百年の孤独」島田荘司 [書籍紹介]
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島田荘司さんの「切り裂きジャック・百年の孤独 (文春文庫) 」
1888年に実際にロンドンで起きた切り裂きジャック事件。その100年後にベルリンでそっくりな事件が起きる・・・ 切り裂きジャック事件をモチーフにした事件を描きつつ、現在も未解決のロンドンの切り裂きジャック事件の真相も推理するという、興味深い作品。昔のロンドンの街の雰囲気の描写も、作品に独特な雰囲気を与えていて良いです。
作品中で展開される動機や犯人像は、未だに明らかになっていない動機や犯人像についての仮説のひとつとして面白いと思いました。100年前の話については、被害者の名前をはじめ、実際の事件の情報を使用しているという点も珍しいですね。
作品中で展開される動機や犯人像は、未だに明らかになっていない動機や犯人像についての仮説のひとつとして面白いと思いました。100年前の話については、被害者の名前をはじめ、実際の事件の情報を使用しているという点も珍しいですね。
冒頭でグロい表現がある(しかも、話とはほとんど関係ない!?)ので、そういったものが苦手な人はご注意ください。
「まほろ駅前多田便利軒」三浦しをん [書籍紹介]
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三浦しをんさんの「 まほろ駅前多田便利軒 (文春文庫) 」 第135回直木賞受賞作。
駅前で便利屋を営む多田と、高校時代の同級生である行天が依頼者からの仕事をこなしていく中で、様々な人生の機微が描かれます。大きな事件もなく、個々の依頼が実は繋がっていて最後に意外な結末がっ!!・・・ということもないのですが、三浦しをん先生の文章に惹きつけられます。 「風が強く吹いている」を読んだ時にも感じましたが、人を描くのがすごく上手な作家さんだと思います。
多田の過去や、仰天の小指のエピソードなどを用いて、「人生はいつでもやり直せる」かもしれないが、完全に元には戻らないことも確実にあるという現実的なことも示しているように感じました。 変わり者の仰天との出会いや、仕事を通じて、「知ろうとせず、求めようとせず、だれともまじわらぬことを安寧と見間違えたまま臆病に息をするだけの日々を送る」状態から抜け出せたのは良かった。自分を守ろうとしている思考・姿勢が、本当に自分の幸福につながっているとは限らないなと思いました。
すべてがFになる」森 博嗣 [書籍紹介]
スポンサードリンク【お知らせ】★★ブログ引っ越しました⇒ https://mikeybook.hatenablog.com/ ★★
森 博嗣さんの「すべてがFになる」
孤島の研究所で、少女時代から隔離された生活を送っていた天才・真賀田博士。ある日、密室である彼女の部屋から両手両足が切断された死体が発見される。一体、誰が、どうやって・・・ 前代未聞の死体の登場の仕方に度肝を抜かれました。そして、真相が明らかになった時、衝撃を受けました。 理系的な表現が多い分、「でも、当時の技術だと・・・」と、一瞬、無粋な突っ込みを考えてしまったりもしましたが、とにかく面白かった! 頭の良い犀川先生と、それをはるかに凌駕する真賀田博士。それぞれの思考や、やり取りも興味深かったです。おすすめ。

すべてがFになる THE PERFECT INSIDER S&Mシリーズ (講談社文庫)
- 作者: 森博嗣
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2012/09/28
- メディア: Kindle版
タグ:森 博嗣
「彼らは世界にはなればなれに立っている」太田愛 [書籍紹介]
スポンサードリンク太田愛さんの「 彼らは世界にはなればなれに立っている (角川書店単行本) 」
架空の町<塔の地>を舞台にした物語。
中央府による文化や情報の制限に抗うことなく、保身のために中央府への忠誠を近い、受容し、周囲に合わせながら暮らす人達を待つ結末とは・・・
淡々と話が進み、終盤は作者のメッセージ的な要素がかなり濃くなります。「犯罪者」や「幻夏」とは作風も世界観も異なるので、そういった過去の作品と同じようなものを期待する人には期待外れかもしれません(私も、ちょっと期待と違いました)。
安全に尊厳を持って生きられる時代の背景にある、長い困難な時代の存在があることや、政府から発信されることを無条件に受容することの危険性など、「天上の葦」に通じるところもあり、作品を通じて伝えたいメッセージなのかもしれません。
・・・が、やっぱり、個人的には、修司・相馬・鑓水が活躍する作品が好き!
「バイバイ、ブラックバード」伊坂幸太郎 [書籍紹介]
スポンサードリンク伊坂幸太郎さんの「 バイバイ、ブラックバード 」
「あのバス」に乗せられるまでの2週間、見張り役の怪人:繭美と共に交際相手(5人)に別れを告げに行くお話。
破天荒な繭美と鈍感な星野のユーモアあふれるやり取りや随所に描かれる繭美の怪人っぷり、個性的な交際相手(キャッツアイ的な・・・)に終始ニヤニヤさせられました。
読者に余韻を与えるこのラストも良いですが、最後の繭美の提案に乗っかった展開も読んでみたかった!
ちなみに、この作品、未完のまま絶筆になった太宰治さんの「 グッド・バイ 」の設定(何股もかけている男性が、その関係を清算する為に女性の協力を得て一人ひとり訪ねていく)を踏襲していて、「繭美」の性格も「キヌ子」の影響を受けているのだとか。「グッド・バイ」も気になります。
「ラットマン」道尾秀介 [書籍紹介]
スポンサードリンク道尾秀介さんの「 ラットマン (光文社文庫) 」
家族内の複雑な感情や、勘違いから生まれた思考や苦悩がうまく描かれ、終盤に次々と伏線が回収されていくのは流石。
前半は大きな盛り上がりは無いものの、登場人物達の人間関係や心情がきちんと描かれ、密かに伏線が張り巡らされていきます。そして、後半に読む手が加速しました。刑事さんのセリフにちゃんと(?)エクスキューズがあるように、動機はちょっと弱いかな?という気もします・・・が、面白かったです。
ストーリーとは全く関係ありませんが、作品中で、Mr.Bigの "Wild World" がCat Stevensのカバーということを知って、ちょっとびっくり。・・・でも、私はMr.Bigの方が好きです!

BIG,BIGGER,BIGGEST! The Best Of MR.BIG
- アーティスト: MR.BIG
- 出版社/メーカー: イーストウエスト・ジャパン
- 発売日: 1996/11/25
- メディア: CD
「占星術殺人事件」島田荘司 [書籍紹介]
スポンサードリンク島田荘司さんの「 占星術殺人事件 改訂完全版 (講談社文庫) 」
密室で殺された画家と、体の一部を切り取られて惨殺された6人の娘たち。一体誰が?どうやって?? 事件から40年以上経過して明らかになった新事実から、真相が明らかに・・・
同じ御手洗さんシリーズの「 改訂完全版 異邦の騎士 (講談社文庫) 」では、初っ端からつかみがあり、読み手を引き付けるようなストーリーが展開されますが、本作では、読者を突き放すような手記(登場人物・カタカナ・記号がいっぱい)で始まり、最後まで「誰が、どうやって?」の謎解きがメインの作品となっています。
巷の評判が高いので謎解きが好きな人はすごく好きなのかもしれません。が、そうでない人にはあまり向かないかも。私は冒頭の手記で匙を投げそうになりました(こんなことは初めて・・・)。
「絶対犯人を当ててやる!」、「トリックを見破るのは得意!」という、腕に覚えのある方は是非挑戦してみて下さい。
「異邦の騎士」島田荘司 [書籍紹介]
スポンサードリンク島田荘司さんの「 改訂完全版 異邦の騎士 (講談社文庫) 」
主人公が公園のベンチで目覚めると記憶を失っていた・・・という設定で始まり、そこからラストまで、まさに山あり谷ありの展開
突っ込みどころは多々ありますが、それを差し引いてもすごい作品でした。あまり事前情報は無い方が楽しめると思いますので、Amazonのレビューなどは見ない方が良いかもしれません。
ちなみに、この作品はシリーズになっていて、他の作品から読んだ方が良いという噂もありますが、私はこれから読んでも十分楽しめました!(お勧めの順番で読むと何が違うんでしょうか?)
「幸福な生活」百田尚樹 [書籍紹介]
スポンサードリンク百田尚樹さんの「 幸福な生活 (祥伝社文庫) 」
一話あたり平均17ページで完結する、全19話のショートショート。
すべてのお話で、ページをめくった最後の一行にかなりブラックだったり、ぞっとするような結末が待っています(何気なくパラパラめくるとオチが見えてしま恐れがありますのでご注意ください)
文章が上手く、テンポよく進むので、気楽に楽しめる作品です。
個人的には、「母の記憶」が面白かったです。
「ナミヤ雑貨店の奇蹟」東野圭吾 [書籍紹介]
スポンサードリンク東野圭吾さんの「 ナミヤ雑貨店の奇蹟 (角川文庫) 」
かつて悩み相談を請け負っていた雑貨店と、悩みを抱える人々を連作短編形式で描いた、時空を超えたファンタジー。
悪事を働いた3人が逃げ込んだ廃業していると思しき雑貨店。そこに真夜中にも関わらず、シャッターの郵便受けから悩み相談の手紙が投函され、3人は相談に回答することに。
相談者の悩みに不器用ながら、誠実に回答していくうちに、人の役に立つことで何かが変わっていく彼ら。また、様々なことがらや登場人物達のつながりも明らかになっていきます。
第四章は、子を持つ身としては、なんとも切なかったですが、温かい気持ちになれる作品です。
「データ分析のための数理モデル入門」 [書籍紹介]
スポンサードリンク今回は小説ではなく、技術解説書の「 データ分析のための数理モデル入門 本質をとらえた分析のために 」
データ分析やモデルについて俯瞰して書かれており、概要を広く理解できます(個々のお話はそんなに深くはないです)。
また、モデル作成時の注意点やノウハウも載っているので、データ分析や機械学習に携わる方にお勧めです。
文中で "If all you have is a hammer, everything looks like a nail" という諺が紹介されていました。
ハンマーしか持っていない人にとっては全ての問題が釘を打つ問題に見えてしまうというバイアスのことを表しているそうです。
そういう意味でも、広く知っておくことは大事なのかもしれません。
本文のデザインも、今まで読んだ技術解説書には無いくらい読みやすかったです。

データ分析のための数理モデル入門 本質をとらえた分析のために
- 作者: 貴裕, 江崎
- 出版社/メーカー: ソシム
- 発売日: 2020/05/13
- メディア: 単行本
「カエルの小指」道尾秀介 [書籍紹介]
スポンサードリンク道尾秀介さんの「 カエルの小指 」。
前作「 カラスの親指 by rule of CROW’s thumb (講談社文庫) 」から10年以上経った世界。詐欺師から完全に足を洗った武沢は実演販売士として真っ当に生きていた。
そんなある日、謎の女子中学生が現れ、とある依頼を引き受けたことで、再び、あのメンバーが集結します。面白くない訳がないですね!今回もまんまと騙されました。
悲しい過去を持つ登場人物達の家族のような絆もこのシリーズの大きな魅力です。人間関係がわかるように、未読の方は、前作の「 カラスの親指 by rule of CROW’s thumb (講談社文庫) 」から読むことをお勧めします!
タグ:道尾秀介
「風が強く吹いている」三浦しをん [書籍紹介]
スポンサードリンク三浦しをんさんの「 風が強く吹いている 」
箱根駅伝には全く興味がなかったのですが、三浦しをんさん原作の映画を観たことをきっかけに読みました。読んで良かった!
陸上への興味も、経験も無い素人同然の大学生達が、ある一人の情熱によって箱根駅伝を目指すことに。10人のメンバー達のキャラクターや関係性がセリフを通じてリアルに表現されていて、箱根駅伝を目指して強くなっていく彼らをリアルに感じながら読み進めました。
各自が限界に挑みながら、襷をつないでいくという駅伝ならではの世界で、一生懸命に目標に向かっていく姿に感動させられました。
「透明人間の納屋」島田荘司 [書籍紹介]
スポンサードリンク島田荘司さんの「 透明人間の納屋 (講談社文庫) 」 。
孤独な少年ヨウイチが唯一心を許し、尊敬する人物である、隣人の真鍋さん。彼は、透明人間が存在すること、そして、納屋で透明人間になる薬を作っていることをヨウイチに告白する。
そんなある日、密室状態のホテルから一人の女性が蒸発するかのようにいなくなり、海岸で死体となって発見される。
真相が明らかにならないまま、26年の月日が経ち、一通の手紙を受け取ったヨウイチは驚愕の事実を知る・・・
子どもも読者として想定している為か、かなり展開が早く、SF的な要素も含んだ軽いお話かな?と思いきや、終盤の手紙をきっかけに、急に現実的で大きな話へと展開します。
自分を取り巻く環境でどうにもならないことがあったり、自分の未熟さを悟ったり、自分の選択を後悔したり・・・少年の視線で語られるストーリーを通じて、ちょっと切なくなる作品でした。
巷で評判の高い、 占星術殺人事件 改訂完全版 (講談社文庫) も読んでみたくなりました。
「異人たちの館」折原一 [書籍紹介]
スポンサードリンク折原一さんの「 異人たちの館 (文春文庫) 」
2018年本屋大賞発掘部門「超発掘本!」
樹海で見つかった白骨死体。近くに落ちていた免許証から、失踪した小松原淳と推定された。それでも、淳の母は息子の帰還を信じて、売れない作家志望の島崎に息子の伝記の執筆を依頼する。
幼少期までさかのぼって調査を進める中で、淳の周りで数々の不穏な事件が起きていることが明らかに。更に、過去の出来事だけでなく、現在もちらつく謎の男の存在・・・
インタビュー、新聞記事、小説、モノローグ・・・と、異なる文体で構成される600ページもの長編ながら、結して冗長な感じはなく、謎が謎を呼ぶ展開で一気に読んでしまいました。
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